桂林から雲南までは鉄道で18時間。
中国の鉄道は无座、硬座、軟座、硬臥、軟臥とあるがこの距離になるとやはり寝台でないと移動できない。无座とは席無し、学生のころ无座で大学のある成都から故郷である安徽省の桐城までを丸一かけて移動していたのは懐かしい思い出。
もう学生でない今回は硬臥を選ぶ。というか硬座とか无座では友人が納得しない。265元なり。
硬臥は一区画に3段2列、6人で乗る。硬臥のベットはその名の通りやや固めで空間が狭いが固めのベッドがすきなので都合がいい。荷物を置くとさっそくお茶をくみにいく。ボトルに砕いたプーアル茶を入れているのを見ると友人が怪訝な顔をして「何だそれは?」と聞いてくる。中国では旅行をするときにはお茶を入れるマイボトルを持参してお茶を入れて飲む。飲み方は簡単でボトルにそれぞれ好みの茶葉を入れ、お湯を注ぎいただく。茶葉は底に沈んだままだ。旅行中は休まる暇がないので、せっかくのやることのない18時間は休む時間に当てようと決めているのでプーアル茶を飲みながらゆっくりする。
やはりやることがないので食堂車に飲みにいこうかと出かける。席についてビールとつまみを注文する。友人の好みでバドワイザーを注文する。しかし、運ばれたビールを見て友人が怪訝な顔をする。「なんで冷えてないんだ?」最近は冷えたビールを出すところも増えてきたが、こういった場所でビールが冷えていないのはごく普通のことだが、彼にとってはあり得ないことらしい。とはいえ、それでもやることがなく、退屈が過ぎ去ることはないので一通り文句を言った後、彼もビールを飲み始める。
ビールを2本ほどあけた頃、彼がぎょっとした顔で僕の後ろを見ている。そしてすぐ目を伏せた。
後ろでじゃらじゃらとした音が聞こえる。何事かと思い後ろを見ると私もぎょっとした。手足を鎖に繋がれた囚人らしき人が刑務官に前後を挟まれて歩いてくる。席に着くと刑務官が食事を注文する。しばらくすると食事が運ばれ、刑務官が手錠を外し食事をする。そして食事が終わるとまた手錠をはめて入ってきたときと同じように前後を刑務官に挟まれ食堂車から出て行った。
何度も鉄道に乗っているがこんな光景を見たのはさすがに初めてでびっくりした。友人はもっとびっくりしているがいい物を見たなどといって写真を撮ろうとしたがさすがにそれはやめておけと忠告した。しかし、雲南へ行く受刑者とはいったいなんなのだろうか。どんな罪を犯し、何をしに雲南へ行くのだろうか?彼は刑務官とともに軟臥に乗っているのだろうか?それとも安い硬座に乗っているのであろうか?
そんなことに思いを巡らせても一向に雲南省に着かない。